ChatGPTの登場で急速に普及した「生成AI」、2024年はどうなる?

ChatGPTが公開されたのは、2022年11月下旬だった。そこが始まりとなり、マイクロソフトからグーグル、アマゾンに至るまで、ほぼすべてのハイテク企業が生成AIの超特急に飛び乗った。

だが、企業や学校、事業などで時間とお金を節約する使用例を、技術者がどんどん発見するにつれて、世界中で「現実の世界」におけるこの技術の適切なバランスを見つける苦労も増えている。

今年に入り、AIの急速な登場と普及は、急速な技術革新と競争力の飛躍をもたらしただけでなく、道徳的・倫理的な議論を次々に巻き起こし、世界中でAIの実装に関する規制が作られたり、行政命令が出されることにもなった。同時に、安全で経済的に持続可能なAIの実装におけるオープンなフレームワークと、より大きな標準を開発しようとするグローバルな提携(最近のMeta + IBM AI Allianceのような)も生まれた。

とはいえ、今年はエキサイティングなテクノロジー・ストーリーが毎日のように押し寄せる変革の年だった。以下に示すのは、生成AIの2023年における簡単な歴史と、それが今後、私たちにとってどのような意味を持つかである。

生成AIの1年:これまでの動きは?

OpenAIのChatGPTが発表されてからわずか数カ月後、マイクロソフトは自社の検索エンジンであるBingに、ChatGPTの要素を組み込むことを発表した。この発表は、Googleを検索エンジンのトップから引き摺り下ろすまでには至らなかったが、他の大手テクノロジー企業たちが生成AIの流れに加わるきっかけとなった。実際、BingとChatGPTのパートナーシップは、わずか数カ月の間に、無限とも思えるAI開発の波を起こした。以下にその一部を紹介しよう:

マイクロソフト

マイクロソフトは、Microsoft Dynamics 365とMicrosoft 365の両方に新しいCopilot(コパイロット)機能を追加するなど、OpenAIのサービスを提供する追加要素を発表した。

Copilot機能は、ビジネスユーザーと一般ユーザーに対して、テキストの要約や編集、メールのよりカジュアルな文面の作成、データセットからの洞察の獲得、さらにはワードやエクセルといった他のマイクロソフトアプリで作成されたコンテンツに基づくプレゼンテーションの作成などを支援する。マイクロソフトは、猛烈なペースでポートフォリオ全体に機能を追加した。

グーグル

これに対して、グーグルの出遅れた発表は、ややぎこちないBard(バード)で始まったものの、最終的には負けてはいなかった。グーグルはCopilotに似た技術であるDuet(デュエット)の提供を開始した。DuetはGoogle Workspace(グーグルワークスペース)全体で生成AIの力を活用できるようにするもので、文章作成を支援したり、プレゼンテーションなどでカスタムビジュアルを作成することもできる。

グーグルはまた、開発者がAIや機械学習に精通していなくても、テキストや画像を使って独自の生成AIアプリを作成できる「Generative AI Studio」(ジェネラティブAIスタジオ)を発表した。12月初旬、グーグルはGemini(ジェミニ)を発表し、その印象的なデモはAI開発競争に一層の興奮をもたらした(一方、デモの実現可能性については疑問が提起されている)。

セールスフォース

セールスフォースはAI Cloudを発表した。これによって、コマースチームがカスタマージャーニーにおけるユーザーエクスペリエンスの向上に関する自動生成された洞察を要求したり、Eメール、ウェブ、モバイル向けにパーソナライズされたコンテンツを作成したり、カスタマーサービスチーム向けに返信を作成したり、顧客向けにパーソナライズされたEメールを生成したりといった、よりカスマイズされたCRM体験の提供が可能となった。同社は、プラットフォーム上で生成されるデータの安全性を中心にそのストーリーを構築してきた。

アドビ

アドビは、画像、3D画像、ベクター、さらには音声や動画コンテンツを1クリックで作成できるAdobe Firefly(アドビファイアフライ)を発表した。2023年における大きな焦点は言語モデルだったが、画像ベースの生成ツールも大きな意味を持っており、アドビはこの分野のリーダーになるのに十分な資格を持つ。

アマゾンウェブサービス(AWS)

AWSは今年、生成AIの輪に加わったが、年末に開催されたre:Invent(リインベント)カンファレンスで、独自のTitan(タイタン)モデルだけでなく、オープンモデルのアプローチや、新サービスのAmazon Q(最も簡単に言うなら、エンタープライズ向けの大規模言語モデル)を発表し、大きな注目を集めた。同社はまた、次世代トレーニングチップTrainium2(トライニウム2)も発表した。

IBM

IBMは、より強力なAIベースモデルをサポートするために、watsonx(ワトソンエックス)のような多面的な新プラットフォームの開発を発表した。同社はまた、イノベーションのスピードがセキュリティ、データ権利、潜在的な侵害に対する法的懸念を生み出す中、生成AIツールの使用に対する補償の提供も始めた。企業向けサービスであるwatsonx.AIをいち早く生成AI化するのに伴い、このサービスを最初に市場に投入した。

エヌビディア

エヌビディアは生成AI向けのチップを独占し、競合他社が追いつこうと競争する中で、同社の最先端GPUへの需要がかつてないほど高まった。AMDが最新GPUを発表し、エヌビディアに競争を挑む一方で、他にもAWS、グーグル、マイクロソフト、インテルからも、柔軟性は低いもののより効率的なチップが市場に投入された。

また、Broadcom(ブロードコム)や Marvell(マーベル)のような企業への注目が大幅に高まっており、データ転送およびインフラストラクチャ用のチップに対する注目も高まっている。明らかに、チップはすべての生成AIツールの中核であり、イノベーション、供給、競争がここでは非常に重要なのだ。

言い換えれば、2023年初頭には、テクノロジー業界そのものが事実上、生成AIと同義語になっていたのだ。歴史上、これほど大きな影響をこれほど速く与えた技術は他にない。ここで示したリストには多くの生成AIに関する情報を挙げたが、網羅的とは言い難く、AIのストーリーを支えるエキサイティングな企業の表面をかすめるのが精一杯だった。

データから読み解く生成AIの将来

AI Decision Maker in The Enterprise Study(企業内のAI意思決定者調査)より、2024年に生成AIへの数百万ドル(数億円)規模の投資を計画している企業は、2023年比で300%以上増加する。生成AIプロジェクトでベンダーを選ぶ基準の上位2項目は、AIに関する専門知識の豊富さと、導入のスピードおよびスケジュールだった。

調査結果は広範囲にわたるが、要約すると、企業は投資を非常に速いペースで増やしており、より迅速な実装と価値到達を目指している。これは、2024年以降の技術支出にとってプラスとなり、生成AIに関して複数の情報源から報告されている次の5年間での2桁台半ば(パーセント)程度のCAGR(複合年間成長率)に見合っている。

生成AIの1年:商用化を超えて、次はどこへ?

今年11月、OpenAIの最高経営責任者であるサム・アルトマンが同社の取締役会によって更迭されたが、1週間も経たないうちに復職した。この解任劇が示唆するのは、AI開発に内包される矛盾である。すなわちAIが人類を助ける可能性と、人類を完全に終わらせる可能性を隔てる境界線の存在だ。

調査結果は広範囲にわたるが、要約すると、企業は投資を非常に速いペースで増やしており、より迅速な実装と価値到達を目指している。これは、2024年以降の技術支出にとってプラスとなり、生成AIに関して複数の情報源から報告されている次の5年間での2桁台半ば(パーセント)程度のCAGR(複合年間成長率)に見合っている。

ひとつだけ確かなことは、生成AIはなくならないということだ。

「監督されないAI」に関連する問題が引き続き浮上しているものの、技術は人間がそれに制限を設ける能力を上回る速度で進化している。これは、来年には生成AIが一般の人々にとってさらにアクセスしやすくなることを意味している。そして、12月にEU(欧州連合)でAI法が成立したように、革新のペースと消費者へのリスクを考えると、規制やコンプライアンスに関するリーダーからの発言が今後もっと聞かれることになるだろう。

結局、生成AIの、日々の急速な意味ある進歩についていくのはほぼ不可能だ。AMDのリサ・スー最高経営責任者(CEO)が先日開催された「Advancing AI」イベントで言及したように、これは業界が目撃した中で最も速い変化のペースであり、今後もさらに加速していくことは間違いない。わくわくする時代が待っている!